東京商工会議所が主催する「カラーコーディネーター検定試験」。ファッション・インテリア・メーカー・広告・建築などさまざまな業界で活かすチャンスがある、人気の資格です。
資格を取得するためには、スクールに通う、通信講座を受けるなどの方法があります。でもこの記事をご覧になっているということは、「独学」での取得に多かれ少なかれ興味をお持ちということでしょう。
そもそもカラーコーディネーターとは、独学で取得できる資格なのでしょうか? 合格したみなさんはどのような勉強をしたのでしょうか。今回はそのあたりの情報について徹底的にリサーチしてみました!
1. カラーコーディネーター資格は独学で取得できる?
できるか否か、ということであれば、答えは「できる」。実際に独学で合格された方もたくさんいます。とはいえ、「簡単に取得できる」わけではありません。3〜1級までありますが、2級・1級レベルになると難易度は高くなってきます。時間も努力も相当必要になるでしょう。
まず、自分自身に問いかけてみてください。「私はカラーコーディネーター資格を本気で取得したいと思っているのか?」と。そして、資格が必要な理由や取得後のキャリアプランを、もう一度考えてみてください。それでも「取得したい」という気持ちが変わらなければ、あなたの思いはきっと本物。目標への一歩を踏み出しましょう。
ただし、独学で頑張るかどうかは、このあとの記事を読んでから決めることをおすすめします。せっかく新たなチャレンジをするのですから、自分に一番合った方法で、確実に取得を目指したいものです。
2. 級ごとに見る、「独学」体験談
では、実際に独学でチャレンジした方々のエピソードを、級ごとに見ていきましょう。自分にもできそうかどうか、判断材料にしてみてください。
2-1. 3級は、独学でも十分いける!
合格された方の話を聞いていると、3級は独学でも比較的合格しやすいレベルのようです。2014年に実施された試験2回の合格率を見ても、75.8%と62.7%。少しバラつきはありますが、受けるのが躊躇われるほどの低い数字では決してありません。
■Aさんの場合
もともと色彩の知識はほぼゼロでしたが、公式テキストと問題集だけの独学でチャレンジしました。勉強時間は、通勤電車内やお昼休みなどを利用して1日1時間くらい。勉強を始めてから受験までの期間は1ヶ月半くらいで、一度で合格しました!
■Bさんの場合
建設業からアパレル関係の仕事に転職したくて、3級を独学で取ることにしました。私が使ったのは公式の問題集1冊のみ。3級は暗記がメインなので、同じ問題を何度も繰り返し解いて覚えました。「何回やっても100点を取れる」くらいまでやって、無事に合格することができました。
■Cさんの場合
テキストと問題集で約3ヶ月勉強して、合格しました。勉強時間は1日2時間程度ですが、毎日休まず勉強することを心がけました。3級であれば、独学でも十分いけると思います。ただ、色の名前や仕組みを覚えたり、物理学・測色学・生理学などの概念を理解することが必要なので、そういった分野が苦手な方にはあまりおすすめできないかも…。
2-2. 2級は、「知識レベル」や「時間」と相談
2級になると、「独学でもいける!」とは断言しにくくなります。2014年度の合格率も、49.9%、29.5%と、5割を下回ってきます。独学で挑んだ方々の感想をまとめると、「頑張れば合格できる」といったところ。
2級の試験範囲には3級の範囲も含まれるため、すでに3級を持っているなら勉強も始めやすいでしょう。一方で、いきなり2級に挑戦する場合は、問題に出てくる専門用語すら理解できない…ということにもなりかねません。3級レベルの勉強から始める分、どうしても時間がかかります。いまの知識レベルや時間と相談して、独学にするかどうか決めましょう。
■Dさん
3級合格から1年半後に、2級の勉強を始めました。使ったのは公式テキストと問題集です。1日1時間×3ヶ月半くらい勉強して、一発合格しました。
■Eさん
2級は難易度がグッと上がった印象でした。たとえば「光」ひとつとっても、3級では「色相」「明度」「彩度」の3要素を理解していればOKでしたが、2級では「ホルムヘルツコウラーシュ効果」「ベゾルトブリュッケ現象」「アブニーシフト」といった専門的な用語が次々と出てきます。3級のベースがあり、かつ新しいことを覚えるキャパがまだ残っているのであれば、独学は不可能ではないと思います。
■Fさん
2級合格までの勉強期間は4ヶ月。1日平均2時間くらいです。平日はなかなか時間が取れなかったので、その分週末に長く勉強するようにしていました。曜日ごとに「テキストを読む」「問題集を解く」などの内容を決め、試験までに出題範囲を網羅できるような計画を立てて臨みました。
2-3. 1級は、相当の覚悟がなければ難しい
1級は、ファッションや美容に関する「ファッション色彩」、プロダクトや経営に関する「商品色彩」、環境や建築に関する「環境色彩」の3分野から1つを選択します。分野によって合格率はまちまちで、ファッション色彩は32.1%、商品色彩は46.3%、環境色彩は13.4%(2014年度実績)。年度によっては1ケタまで下がることもあるくらい、難易度は高いとされています。
1級を独学で取得するのが難しいと言われている背景には、独学するための参考書や情報が極端に少ない、という理由も。3級・2級はマークシート方式ですが、1級はマークシート+論述問題になり、模範解答をそのまま覚える…というわけにもいきません。
疑問に答えてくれる人も、出した答えが正解かを判断してくれる人も、行き詰まったときにアドバイスをくれる人もいない。そんな状況で勉強していくことはなかなか難しいものです。独学で合格している人ももちろん皆無ではありませんが、自信のない方はスクールや通信講座を選んだほうが効率的かもしれません。
■Gさん
スクールや通信講座の資料も請求して検討したのですが、自分のペースで進めたかったので結局独学という道を選びました。書店で参考書を買い、仕事と並行して勉強すること約2年。晴れて合格しました。「絶対合格する」という気合いと根気がなければ続けられなかったかも。
■Hさん
商品色彩のテキストだけでも約320ページ。商品に使われる素材のリストがひたすら100ページ以上続くなど、心が折れそうになりました。でも書籍購入にすでに1万円以上費やしていたので、いまさら諦めるのは癪だと思い、まずは何度もテキストを流し読み。徐々に理解が深まっていったら、次は章ごとに要点をノートにまとめたり、暗記帳を作ったり…。一つひとつ確実に理解していくことを心がけ、約半年間の勉強の末に合格することができました。
3. 独学する際におさえておきたいポイント
では、「独学で頑張る」と決めたあなたに、おさえておきたい勉強のコツをご紹介します。ベストな勉強法は人それぞれですので、必ずしもこれに則る必要はないのですが、基本的な考え方として参考になれば幸いです。
3-1. 試験日から逆算して1日の勉強時間を決める
試験の開催日程は、3級・2級が年2回、1級が年1回。特に3級・2級の場合、「○月に間に合わなければその次でもいいや」という考えは捨てること。どの回の試験を受けるかを決めたら、そこをゴールに設定します。そして試験日までどれくらいの期間があるかを把握しましょう。
必要な勉強時間は人によりピンキリですが、目安としては、3級なら1日2時間×3ヶ月、2級なら1日2時間×半年ほど。試験日までに残された期間と照らし合わせて、目安の勉強時間を確保するには1日何時間勉強すればいいかを計算します。そこで算出された時間が、1日のノルマと考えてください。
毎日きっちり同じ時間でなくてもOK。平日はなかなか時間が取れないから、週末に余分に勉強時間を確保する…といった形でも構いません。ただし週単位で見たときに帳尻が合うように、しっかり調整すること。今週は疲れたから来週に持ち越し、なんてことはNGです! だらだらと先延ばしになって、いつまで経っても試験範囲をマスターできません。
3-2. 公式テキストと問題集をそろえる
試験対策として最も参考になるのは、やはり東京商工会議所が出版する公式のテキスト&問題集。特に3級の出題範囲は基礎的なものが多く、いままで出題されたことのない問題や妙にひねった問題などはほとんどないと言われています。過去問を繰り返し解いておけば、必要な知識が自然と頭に入るはずです。
公式のもののほかに、クチコミで評価が高いのは『認定講師が教えるカラーコーディネーター3級(2級)テキスト&問題集』(成美堂出版)。カラーコンサルティングや色彩教育において20年以上のキャリアを持つ著者による、ポイントをおさえた内容が人気のようです。
3-3. まずはテキストを一通り流し読みする
これから勉強する内容の全体像を掴むため、まずはテキストにざっと目を通します。この時点では、無理に理解しようとしたり、メモを取ったり、暗記したりはしなくてOK。あくまでも「目を通す」だけにとどめておきましょう。
3-4. テキストの章ごとに、関連する問題集を解く
全体像を掴んだら、今度は1章ずつ着実に知識をつけていきます。テキストを読み、その内容に関連する問題集を解き、わからなければテキストに戻って内容を復習。それをひたすら繰り返しながら、1章1章解き進めていきます。
1冊終わったら、また最初に戻って問題集を解き直します。100点満点が取れるようになるまで何度も解きましょう。過去問を完璧にマスターしておけば、合格の確率はぐんと高まるはずです。
3-5. 1級の論述問題にも有効な対策あり!
1級になると、マークシートに加えて論述問題が出題されます。200字と500字の2種類の論述があり、過去にはこんな問題が出題されました(商品色彩の場合)。
<200字>
・虹の色について物理的知見から(2012年)
・色の心理的効果(2008年)
・遠隔地間において色の情報を正確に伝える方法(2005年)
など
<500字>
・カラーコーディネーターに必要とされるフィールドワークについて(2012年)
・ある商品を新しく若者向けにカラーを打ち出した商品として販売する際の色彩計画(2010年)
・企業のこれからの色彩提案方法(2007年)
など
正解を暗記する…というわけにはいかない分、非常に難しそうに見える論述問題。でも恐れる必要はありません。ゼロから自分で考えるとなると非常に難易度が高いですが、テキストの内容が頭に入っていれば、それをもとに論述を組み立てることができます。
テキストをしっかり理解する。カラーコーディネーター検定試験HPから過去の論述問題の模範解答を探し、そのまま書き写して書き方のコツを掴む。出題されそうなテーマにめぼしをつけて、論述してみる。これらが論述問題の対策です。
4. 独学とそれ以外での費用の違い
独学の最大のメリットは、スクールや通信講座に比べて費用が安く済むこと。最後に、それぞれにかかる費用の相場をご紹介したいと思います。
<3級の場合の例>
■独学
・カラーコーディネーター検定試験3級公式テキスト 3,024円
・カラーコーディネーター検定試験問題集 1,944円
・受験料 5,250円
合計 10,218円
■スクール
・スクール 5〜15万円程度
・受験料 5,250円
合計 55,250〜155,250円程度
■通信講座
・通信講座 5万円程度
・受験料 5,250円
合計 55,250円程度
5. まとめ
カラーコーディネーター資格を独学で取得する決意は固まったでしょうか? あるいはこの記事を読んで「独学は向いていないかも…」と気づいた、というケースもあるかもしれませんね。独学にしても、スクールや通信講座にしても、それぞれにメリット・デメリットがあります。「カラーコーディネーター資格を取得する」という目的の達成に向けて、ご自身が最も納得できる方法を選択してくださいね。