どの分野においても重要な意味を持つ「色」。服、インテリア、食品、自動車、広告、建物、果ては街にいたるまで、挙げればキリがないほどです。
そのため、色彩の専門知識を持つカラーコーディネーターが活躍するフィールドは非常に多彩。この記事では、カラーコーディネーター資格を活かしたいと考えている方、もしくはこれから取得しようと思っている方に向けて、有資格者が実際に活躍している仕事をご紹介していきたいと思います。資格を持っていれば、どのくらい就職に有利なのでしょうか。
1. カラーコーディネーター資格を持つ人の就職先
そもそも「カラーコーディネーター」とは資格の名称。職種としての求人募集もありますが、数はあまり多くありません。資格を活かすのであれば、カラーコーディネーター有資格者の持つ知識やスキルがどんな仕事で活かされるのかをまずはチェックする必要があります。
では、カラーコーディネーター資格を持っている人は、どんな企業・職種で活躍しているのでしょうか? 業界ごとに具体的に見ていきましょう。
1-1. ファッション・美容関連
ファッションは、カラーコーディネーションが最も重視される分野のひとつ。商品そのものの配色はもちろん、アイテムの組み合わせ、店舗全体のバランス、着る人との相性など、さまざまなコーディネートが求められます。仕事内容として挙げられるのは以下。
- ■アパレルメーカーでの商品開発・デザイナー(服・テキスタイル・プリントなど)
- ■アパレルメーカーや小売店でのディスプレイデザイナー・アドバイザー
- ■ファッションアドバイザー
- ■スタイリスト
- ■化粧品メーカーでの商品開発
- ■メイクアップアーティスト
- ■ヘアカラーリスト
- ■ネイリスト
- ■ブライダル関連会社でのアドバイザー・プランナー
など
1-2. インテリア関連
住空間における色は、人の生活と密接に関わるもの。住みやすさ、スタイリッシュさ、住む人の好みなどをトータルで考えていくことが求められます。インテリアコーディネーター資格とあわせて取得している人も多いようです。
- ■インテリアメーカーでの商品開発・デザイナー
- ■住宅メーカー・リフォーム会社・不動産会社・建築事務所などでのインテリアコーディネーター
- ■住宅メーカー・リフォーム会社・不動産会社・建築事務所などでの内装デザイナー
- ■インテリアショップや住宅ショールームでの販売・アドバイザー
など
1-3. メーカー関連
メーカーとひと口に言ってもさまざまな分野がありますが、わかりやすいところで言えば、自動車や家電などの工業製品メーカー。また、商品そのものだけでなく商品パッケージにおいても色は重視されますので、カラーコーディネーター資格を活かせるメーカーは多岐にわたります。
- ■工業製品メーカーでの商品開発・プロダクトデザイナー・カラーデザイナー
- ■食品メーカーでの商品企画
- ■各種メーカーでのパッケージデザイナー
など
1-4. 広告・デザイン関連
商品やブランドを効果的にアピールするには、論理的根拠とセンスに則った広告・デザイン戦略が欠かせません。広告・デザイン関連会社をはじめ、各企業の宣伝部で働くという道もあります。
- ■広告代理店・制作会社・デザイン事務所でのプランナー・デザイナー(広告・販促・映像・WEB・空間・CIなど)
- ■出版社でのプランナー・デザイナー・編集
- ■企業宣伝部でのプランナー・デザイナー
など
1-5. 建築・都市開発関連
「建物」や「街」といったスケールの大きな対象物であっても、色は重要です。空間や環境全体を見据えたカラーコーディネーションが求められます。
- ■住宅メーカー・リフォーム会社・不動産会社・建築事務所などでの建築デザイナー
- ■建設会社での建築塗装
- ■ディベロッパー・造園会社・行政機関などでの都市計画における色彩計画
など
1-6. 色彩専門家
「コンサルタント」「アドバイザー」といった形で、これまで述べた職種の方々や個人の方々にアドバイスをするという仕事もあります。コンサルティング会社などに勤めるほか、独立してフリーランスとして活躍する道もあります。
- ■カラーコーディネーター・コンサルタント・アドバイザー
- ■パーソナルーカラーアナリスト(個人に似合う色を分析・提案する仕事)
- ■カラーセラピスト(色彩療法を用いてカウンセリングを行なう仕事)
- ■セミナーやスクールでの講師
- ■カラーコーディネーター検定試験の認定講師(認定講師制度で認定された人が持てる肩書き)
など
2. そもそも「カラーコーディネーター」ってどんな資格?
ここまでカラーコーディネーター資格が活かせる仕事をご紹介してきましたが、そもそも「カラーコーディネーター」とはどんな資格なのでしょうか? これから取得を考えている方に向けて、資格の概要をまとめてみました。
2-1. カラーコーディネーターに求められる知識・スキル(3~1級)
「カラーコーディネーター検定試験」は、東京商工会議所が主催するカラー検定。色の性質や特性に関する基礎知識と、ビジネスシーンに役立つ実践的な知識を学ぶことができます。
難易度に応じて3〜1級まで設けられています。それぞれの出題範囲を見てみましょう。
- ■3級 <色彩に関する基礎的な知識が問われる>
- ・色の性質
・色と心理
・色を表し、伝える方法
・配色と色彩調和
・色と文化
など
※マークシート方式
※制限時間は2時間
※100点満点とし、70点以上をもって合格とする
※合格者には、「アシスタント・カラーコーディネーター」の称号が与えられる
- ■2級 <3級レベルの知識に加え、色彩の応用力など幅広い知識が問われる>
- ・カラーコーディネーションの際に考慮すべき基礎事項
・近現代のデザインとカラーの歴史
・色の見え方の多様性とカラーユニバーサルデザイン
・流行現象の理論と色彩の流行
・色彩の心理的効果
など
※マークシート方式
※制限時間は2時間
※100点満点とし、70点以上をもって合格とする
※合格者には、「2級カラーコーディネーター」の称号が与えられる
- ■1級 <各分野における専門的な知識と、より実践で役立つ能力が問われる>
- ・ファッション色彩
→ファッションビジネスにおける色彩計画の実際、衣服と化粧のカラーコーディネートなど - ・商品色彩
経営に色彩を活かすための諸データの整備、商品の色彩計画のための理論と実践など - ・環境色彩
→カラーコーディネーションの方法とそのプロセス、建築計画、環境計画など
※3つの分野のうち、1つの分野を選択
※マークシート方式および論述問題
※制限時間は2時間30分
※100点満点とし、70点以上をもって合格とする
※合格者には、「1級カラーコーディネーター『○○色彩』」の称号が与えられる
2-2. 試験概要と合格率
試験の開催日程は、3級・2級が年2回、1級が年1回。試験日の約1ヶ月後に合否が発表されます。2級・1級から受験したり、2級・1級や3級・2級を同日に受験することもできます。
受験料は、3級が5,250円、2級が7,340円、1級が9,440円(いずれも税込み)。決して安くはないので、受けるからにはしっかり準備して臨みたいものです。
気になる受験者数と合格率は以下のとおり(2014年度実績)。同じ級でも回によって合格率にバラつきがあるようです。
- ■3級
- 第36回:実受験者3,676人、合格率75.8%
第37回:実受験者4,243人、合格率62.7%
- ■2級
- 第36回:実受験者1,989人、合格率49.9%
第37回:実受験者2,081人、合格率29.5%
- ■1級
- ファッション色彩:実受験者162人、合格率32.1%
商品色彩:実受験者229人、合格率46.3%
環境色彩:実受験者216人、合格率13.4%
合計:実受験者607人、合格率30.8%
3. カラーコーディネーター資格は就職に有利?
さて、カラーコーディネーター資格の概要がわかったところで、気になる問題があります。それは、「資格があれば就職に有利になるの?」ということ。さまざまな仕事で活かせることはわかりましたが、一生懸命勉強してまで本当に取得するべき資格なのでしょうか?
3-1. 資格だけでキャリアチェンジできる?
資格を取得すればいろんな企業から引っ張りだこに……ということは、残念ながら考えにくいです。なぜなら、冒頭でも述べたとおり、「カラーコーディネーター」という職種で採用したいと考えている企業がそこまで多くないからです。
ハローワークによれば、正社員求人件数およそ41万件のうち、カラーコーディネーター資格を問う求人件数はわずか17件(2014年8月10日時点)。資格を取ったからと言って、すぐにカラーコーディネーションの仕事に就けるとは思わないほうがいいでしょう。
ただし、「有利かどうか」という観点で見れば、答えはYES。肩書きそのものというよりは、試験に受かるレベルの知識を持ち合わせていることが、企業にとって魅力に映る可能性があるということです。「資格がある」というだけで知識レベルをアピールすることができるため、書類選考の段階でもアドバンテージになるでしょう。
挑戦してみたい業界や企業があるなら、持っている知識をそこで具体的にどう活かすか、プラスアルファで身につけておくべき知識やスキルがないか、じっくり考えてみることをおすすめします。
3-2. 資格の有無での給与・待遇の違い
カラーコーディネーターは活躍の場が多岐にわたるため、平均年収などの統計データは存在しないようです。カラーコーディネーターとしての相場というよりは、就職した企業の給与相場がそのまま当てはまるケースが大半。たとえばアパレルメーカーのデザイナーであれば、企業規模や経験などにもよりますが、年収400万円程度が平均と言われています。
企業によっては資格手当を支給するケースも。その場合は、基本給+月5000円〜2万円程度が上乗せされることになります。
また、パーソナルーカラーアナリストやカラーセラピストとして個人と仕事をした場合は、1回あたり5,000円〜1万5,000円ほどが相場のよう。ファッションやメイクなどコンサルティングの範囲が広がれば、その分金額も上がることが期待されます。
独立して自分の名前で仕事をするようになれば、ニーズに応じて収入もアップしていくはず。スタート時点で「稼げる仕事」とは言いにくいですが、活躍次第で可能性はいくらでも広がりそうです。
4. カラーコーディネーター資格に加えて身につけておきたいスキル
カラーコーディネーター資格を持っている人の中には、ほかのスキルと組み合わせて“自分の武器”にしている人も多くいます。最後に、プラスアルファで身につけておきたいスキルについてご紹介します。
4-1. ほかの資格との合わせワザ
職種によって有効なのが、ダブルライセンス。挑戦したい分野の専門資格と一緒に取得しておくと、さらに箔がつきます。
ファッション・美容関連なら、ファッションビジネス検定、美容師、ネイリストなど。インテリア関連なら、インテリアコーディネーター、インテリアプランナー、住環境福祉コーディネーター、キッチンスペシャリスト、リビングスタイリストなど。講師やさらなるスペシャリストの道に進むなら、色彩講師、カラーデザイナー、カラーコーディネーター検定試験指導者などが挙げられます。
4-2. 企画力・デザイン力・センス
これらは、分野を問わず求められるスキルと言えます。いくら知識があっても、それをもとに企画提案したり、実際に形にしたりする力がなければ、宝の持ち腐れ。
これらは実務を通じて磨くのが一番手っ取り早いですが、「これから転職する」といった場合にはそうもいかないですよね。目指す分野の最新情報やトレンドを常にキャッチアップすることはもちろん、自分なりの企画を考えたり、その道のエキスパートの仕事ぶりを研究したり、セミナーや勉強会に参加するなど、自己研鑽を怠らないようにしましょう。
4-3. コミュニケーションスキル
どれほど専門的な職種であっても、ビジネスである限りは人とのコミュニケーションが発生します。そもそも、色を通じて「人」の心を動かす仕事なのですから、対人関係力は必須と言っていいスキル。
相手の気持ちを汲む、相手の話を聞いて理解する、自分の考えを論理立てて伝える、立場の異なる複数の人を調整しながらプロジェクトを進めていく、など基本的なコミュニケーションスキルを磨いておきましょう。これならどんな仕事であっても高めることができるので、転職前の準備として常に意識しておくことが大切です。
5. まとめ
カラーコーディネーター検定試験で養われる知識は、あらゆる分野で活かせるオールマイティーな知識。とはいえ、「資格があればOK」ではなく、それをどう活かしていくかを考えることが重要です。
すでに資格をお持ちの方も、これから取得しようと思っている方も、せっかくの専門資格ですから最大限に活かして活躍してくださいね!